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新メンバーオンボーディングによるエンゲージメントを高めるテック企業

米国の急成長テック企業を2社経験し、オンボーディングについてツイートしたところ聞いてみたいというフィードバックをいただいたので、私の主観でまとめてみたいと思う。

この記事で紹介すること

  1. そもそも新メンバーオンボーディングではいったいどんなことをしているのか
  2. なぜここまで投資して、オンボーディングに時間をかけているのかの私見

きっかけ

Twitterで今勤めている Auth0 (オースゼロ)のオンボーディングに関していくつかツイートしたところ新卒同期のブンブンや、

米国で0 -> 1 を担当した野村さんからも、

米国スタートアップのオンボーディングについてぜひ聞いてみたいというフィードバックをいただきました。少しでも需要があるかもと、書いてみることにしました。

ここに書く内容は完全なる主観です。  

背景

急成長テック企業では、人がとてもつもない勢いで増えていきます。私が以前勤めていた米国発のオンライン決済プラットフォームStripe(デカコーン企業)では、入社したときは世界で600人弱、日本では5人目でした。そして、2年半で世界で1600人まで拡大していきました。また、現在勤めているAuth0は今では500人弱ですが、一年前は250名前後だったそうです。つまり、年間で倍くらいの人数を採用していきます。StripeもAuth0もこの規模でも新メンバーオンボーディング(入社後トレーニング)を本社でやっています。

両社ともに資金調達は、シリーズD以降で数百億を調達し、他国展開する体力がそれなりにある企業です。人への投資をしっかりしています。

オンボーディングの期間

Auth0の新メンバーオンボーディングは基本一週間。私の場合、日本で初めての職務での採用かつ、自分から学びたいことリストを出したら一週間ではおさまらなくなり、本社の担当メンバーや世界にいるメンバーとディスカッションをするため滞在期間をさらに一週間伸ばし、トータル二週間となりました。Stripeは私が入社したときは3週間でした。

他の人にも聞いてみたところ、本社ではなく地域HQであるシンガポールなどに行く会社もあるようです。期間は3日〜3週間以内でばらつきがあるようです。

それでは自身の経験を書いてみたいと思います。

私が経験してきたオンボーディングの内容

具体的にはそんなに書きませんが、概要は以下のような内容です。まず、オンボーディングのクラスの大きさによりますが2パートで構成されます。

  1. 全員同時に受けるパート
  2. 役割別によるパート

全員同時に受けるパート

どんな内容を受けたかというと。

  • 会社の歴史。サイトに掲載されていない話などがテッパンで盛り上がります。
  • Executive からの薫陶とQ&A(AMA, Ask Me Anything形式でなんでも質問してよい)
  • 組織の紹介。これは会社によると思うが、小さ目の会社だと全組織がわかる。
  • 製品の紹介。これは多くの会社でみっちりやるのだと思います。製品の仕組み、バリュー、ユースケースなどを理解します。
  • ツールに慣れるゲーム形式ワークショップ。会社によって使用ツールが違うこともあります。よく使うツールについては、ゲーム形式でワークショップで学ぶこともあった
  • カルチャーに関するチームワークショップ
  • Financials。非公開企業なので外部に公開できない内容を細かく見せる。これは会社の文化が現れていて、だいたいのテックスタートアップはTrustとTransparencyを大事にしていると思います。それをもとに、FinancialsをCFOやCROから説明があります。
  • ランチ。シャッフルランチなどでいろんな人と会うことも。まったく関係の無いチームの人とランチすることがあるので、自分より歴の長い社員に聞きたいことをグサグサ聞きます。
  • ユーザーサポートの回答。これは会社のカルチャーだと思うのですが、Stripeのオンボーディングでは役割関係なく、全員がお問い合わせに回答するトレーニングがあり、私はこれ素晴らしいと思います。有料サービスでサポートを提供している場合は、これがない場合もある。
  • IT機器の配布、ツールの説明
  • ノベルティの配布
  • Happy hour参加。テック企業だとHappy hourと言って、ある曜日の夕方カジュアルにオープンスペースで飲む時間があると思います。StripeもAuth0もあります。頑張ってソーシャライズ!笑 これハードル高いよ。

Tips。 まったく知らない初対面の社員に聞くと、良い会話ができる質問をここに書いてみます。 (握手して、軽い自己紹介をお互いにした後)

  • How long have you been here?
  • How is your life at (会社名)? )
  • What did you do before (会社名)?
  • Why did you choose this company?
  • Any advice for new members?
    ポイントは、全部オープンの質問にすること。この質問すると結構面白く、どんな人がどんな思いでこの会社に入ったかを知ることができます。

  • Have you been to Japan? (これおまけ)

カジュアルに盛り上がる。日本が小さいチームというのは本社の人が知っています。未知のマーケットを数人でどうやって開拓していくかを知りたいでしょう。

役割別にやるパート

私の場合、今回はマーケティングでの採用です。このパートは完全に仕事環境の整備がテーマだと思います。どのようなときに誰に話をすればものごとが解決しそうか、社内のプロセスを知っておくのが大事です。

  • 各担当のキーマンと1:1で誰が何を担当しているかを把握する。
  • その役割に特殊の社内ツールを学ぶ。同じツールでも会社によって全然使い方が違ったり、内製製品があったりこのあたりかなり面白いです。
  • 自分のプランをぶつけてフィードバックをもらいつつ、日本でどんなことをやるか共有する。

三番目、かなり大事だと思っています。

私は、StripeもAuth0も日本チームが一桁台(5人とか)なので、そもそも日本だけですべてを独立して進めることはできないですし、効率が悪いです。本社の戦略を理解する、最低限のツールを学ぶ、つまりインプットです。それに加えて、自分たちの戦略やプランを共有して、フィードバックをもらうことも大事です。そこから「だったらこの人に会うといいよ」というのをさらにもらいます。戦略やプラン自体は入社前に見せているので、誰に会うのが良いかなどのフィードバックはすでにもらえることが多いです。

教えてもらったら、あとは常に状況を共有し(5:15とかで)つつ、成果で示すのみ。

急成長企業はすべてが整っているわけではもちろんありませんし、成長痛を伴っています。急激に成長しているのですが、その時点のプロセスを知っておかないと「日本何勝手なことしてんの?」みたいな、意図しないひずみが産まれてしまうので、そうならいようにしたいものです。

エンジニア採用の場合は、エンジニア専用のスピンナッププログラムがあるのが一般的なようです。所属するチームや組織で、モクモク会のようなことをやったり、OJTで動いているプロジェクトに入ってアウトプット出したりしているのを見かけます。

その他にも、営業は営業、サポートはサポートと別々にスピンナッププログラムが用意されているか、もしくは自分でリクエストして学ぶ機会を作って行く感じですね。

オンボーディングをみっちりするのはなぜか?(私見)

上記のような内容で、1-3週間ほどみっちりやるのですが、そもそもなぜこんなことをするのでしょうか? 個人的には、3つ理由があると思います。

  1. 会社・カルチャーの理解を深める = スケールの土台を作る
  2. エンゲージメントを高める
  3. 関連メンバーとつながりを作っておきインパクトある仕事を進めやすくする

会社・カルチャーの理解を深める = スケールの土台を作る

成長するスピードが早い時、容易に想像することができるのが、組織としてのDNAや一体感(カルチャー)を保つのが一般的には困難になることです。最近のテック企業の多くは、かなり早い段階からカルチャーをすごく大切にしています。カルチャーがしっかりしているとスケールしても、統一した認識で意思決定ができるのでとても大事だと思います。

カルチャーが大事というと、少しだけ話しはそれますが、採用の段階からスキルがあるかという観点に加え、カルチャーにフィットするかというのが多角的に見られます。多くの面接を経て、ときには本社へ送られて面接を突破し、晴れて採用されてもなお、カルチャーをしっかり伝えるのが大切です。

会社がどのように成り立ってきたか、自分たちが大切にしていることは何か、入社前から色々調べたり聞いたりしていても、中に入らないと実際のところはわかりません。なので、社員歴が浅い人も長い人も統一のフィロソフィーを認識するのが大切です。

カルチャーワークショップ

Auth0のオンボーディングを少しご紹介。同日入社の社員で、いくつかのグループにわかれディスカッション。企業のどのバリューが自分に刺さっているかなどをお互いにシェア。最後、チーム全員にアウトプットを出すワークショップがありました。アウトプットの形はなんでもあり。うちのチームはWhat do you meme? というゲームからヒントを得て、ゲームを作りました。他のチームは、いくつかあるコアバリューの中から一つを選び、ストーリーにして、ムービーを作っていました。2時間でここまでできるのかというくらいすごかった。

エンゲージメントを高める

リモートで働く社員もどこのオフィスで働く社員も最初のオンボーディングは、本社へ来ることがおすすめされています。このトレーニングでは本社、米国内でリモート、ロンドンオフィス、アムステルダムからリモート、アルゼンチンからリモート、東京オフィス、そして東京オフィスと静岡でリモートを掛け合わせる人(私)がいたと思います。Auth0はリモート社員が半数を有に超えているらしいです。。。信じられない。。。

みんなバラバラのところで仕事をするので、あえてオフラインで一箇所に集まり、しっかりチームを作るのが大切です。もちろんこれにはそれなりの投資をしているのですが、できるだけ会社を好きになってもらい、充実した気持ちで仕事をして欲しいというのはどういう会社も同じでしょう。

リモート社員でもオフィスで働く社員でも、みな同じように高い生産性を維持するには、会社のDNA、組織の構成、ツール、組織連携など具体的に知っておく必要があります。座学でもできるのですが、あえて本社に全員来させて、役員などから直接説明を受けるというのは、気持ちが全然違います。高ぶりますよね。会社に大切にされているな、これから頑張ろう、とほぼすべての人が思うでしょう。

関連メンバーとつながりを作っておきインパクトある仕事を進めやすくする

私はこれがかなり大事だと思います。一人でものごとを完結するより、多くの人の力を借りて仕事をするほうが成果が大きくなります、一般的に。そのためにも、自分のやりたいことを達成するための関係づくり、誰に話せばものごとが進むのかを掴んでおくのがとても大事です。

スタートアップといえど、みな人間です。結局、多くの場合、人で動くことがあります。キーマンとなるべき人を確実に掴んでおき、いつでも相談できる状態にしておくというのは大事です。そのためにも、担当者と1:1をしてお互いの活動をシェアすることが大事だなと思います。組織の成り立ち・歴史、人の構成、関係部署など多くのことを理解しておくとイメージがわきます。

また、ディナーなどに呼ばれたら積極的に行って、カジュアルにも関係を作ります。ディナーなどはもう慣れたので、どんな質問をするとみんなリラックスするかとか、盛り上がるかとかはだいたい理解できるようになりました。あんまり仕事に関係しない家族の話とかもすると、関係を近づけることができます。だいたい、私は質問してばっかりになっちゃうんですけど笑 私は、人に対する興味がすごくあって、会話が途切れることがほぼないです。これはビジネススクール時代に体得した気がするのですが、人間ってみな本当に面白い。その人のヒストリーを知るだけでも相当面白いので、3時間でも話していられる自信があります。話がそれましたが、カジュアルな場で関係づくりをするのも大事かなと思います。

最後に。

リモートの社員でも基本この5日間はここに来ます。それでも何らかの理由で来れない人は、Zoomで入ってきています。おそらくこれを前編Zoomでやるのは難しいとは思いますが、Zoomでつないでいます。

最後の最後に。 もちろんこれ全編英語なので、上手い下手関係なく、これを生き抜く英語力と精神力、そして何よりも楽しむマインドセットが大事でしょう。

ぜひ、盛り上げて行きましょう。(何を)。